共生
〜一緒にいるってどういうこと?〜
2009.12.2up(2008.9.2作)
つい先日、突然、子どもに聞かれました。
「先生、このぬいぐるみにダニっているの?」
「ダニって見えないの?」

まあ、一応、時々、天日干しして、ファブリーズとかしてますが・・・

私はその質問から、
学生時代に文化人類学の先生が、
ある日、講義の最初に唐突に、
なんだか感慨深そうな笑みを浮かべながら、
「人間とダニの生活環境はほぼ一緒で、
どんなに清潔な環境でも布団の中にダニが
〇〇匹いるものだ、という話を昨日聞いた。
ダニが一匹も生きられない環境では、
人間も生きられないのだそうだ。
これからの人間は、毎晩、布団の中で一緒に寝ている
この〇〇匹のダニのことも考えて生きなければいけなくなると思う」と
穏やかに話されていたことを思い出しました。
「〇〇匹」というのは正確には何匹だったかは覚えていませんが、
少なくとも数匹とかいうレベルではなかったです。

その後、数年経ったところで、
「人間はウィルスによって進化させられてきた」という
ウィルス進化論が一部で脚光を浴びた時期があって、
それはつまり、理性などから程遠いちっちゃい生物に
人間は決定的なところで操られてきた、ということなわけで、
そんなことになると、
あの文化人類学の先生のおっしゃっていた意味が
私にもより深く分かるようになってくると同時に
その先生の先見の明に驚かされることがありました。


まあ、この話、気持ち悪く思われる方も多いみたいです。
私もあちこちでこの話をしたことがありますが、
だいたい気持ち悪がられて、理解してもらえません。


えっと、それで、「〇〇匹」というのは何匹だったんだろうか?と
ネット検索してみましたが、
あちこちのページで、みんな桁からしてバラバラなことが書いてあります。
どうやら、布団クリーニングをお勧めする情報が多いようで、
「ほうっておくとこんなに布団にダニが繁殖して気持ち悪いことになりますよ!」と
脅してるんじゃないか?という気が少々しました。
まあ、布団それぞれの環境で数はそれぞれ変わる、ということのようでもありますが、
これなんかが信用できそうな気がします。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002420403/

その他、人間はイヤだと思っても
口の中は雑菌だらけだし、
腸の中では、善玉菌も悪玉菌もいろいろいて、
みんなで共生しているわけなのですね。

イヤなものはイヤですが、
一緒に生きていっている生物と一緒にいることを
なんでそんなにイヤだと反応するようになってしまったんでしょうかねえ?

昔は存在に気付いていなかったから、イヤでもなんでもなかったけど、
いるって気付いちゃったから、イヤになった、ってことでしょうかねえ?

ま、これらのヒトに寄生している生物は
過剰増殖しない限り実害はないのですが、
不安をあおってしまうほうが危険だということで、
知っている人もあまりこれ以上は言わないようにしているらしい話が
ここら辺ではいくつかあるみたいです。
それくらい、現代人はいつも一緒に生きているちっちゃな生物を
受け入れられないようです。


・・・とまあ、メルマガ配送が9月にずれ込んでしまい、
新学期スタートの今日、数日前の子どもからの問いかけに始まる
この話が、なぜかとても私の中にどんどん響いてくるのでした。

ダニに例えるのは不謹慎と思われるかもしれませんが
(一応、アバウトにこれ、例え話だったんですけれど)、
ダニに例えるのは不謹慎と思うのが不謹慎かもしれません。
ダニは増え過ぎたら困りますが、
いまのところどうしても
人間と共生していかなくてはいけない生物だからです。

一緒にいるってどういうことなんでしょうか?

(おっと、誤解されそうなので、
一応お断りしておきますが、
夏休みに子どもが家にいたということを
例えているのではありません。)

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