構音の遠隔指導に必要なお薦め機材
2020.4.28up/2022.10.1改訂

1.はじめに

わかばルームで構音の遠隔指導をご希望される場合、パソコンまたはタブレットの他、きれいな音でやりとりをするために、マイクとスピーカーを別途ご用意いただきたいです。

すでにパソコンやタブレットに接続できるオーディオ機器をお持ちの方は、それで十分かもしれません。しかし、ある程度のスペックを満たさないと、機器のせいで、お子さんが子音の違いを聴き分けられなかったり、構音に伴う身体感覚を感じ取れなかったりすることも起こり得ます。指導する側がお子さんの構音の状態を正しく評価できないことも起こり得ます。

遠く離れたやりとりであっても、どこまでリアルで違和感を感じさせない環境を用意できるかは、構音習得の進捗に大いに影響を与える条件であると思われます。


2.満たして欲しいスペック(予備知識ですので、必要なければ読み飛ばして下さい。)

人間の耳で聴くことができるのは、周波数で言うと、一番低い音で20Hz、一番高い音で20,000Hz(=20kHz)となります。数字が小さくなればなるほど低い音、大きくなればなるほど高い音になりますが、人間の耳では20Hzより低い音と20,000Hzより高い音は物理的に聴くことができないとされています(時々、聴こえるという人もいるようですが)。音楽や映画などを鑑賞するスピーカーを選択する場合には、この数字が参考になります。

一方、日本語で用いられる語音は、だいたい250Hzから8,000Hz(=8kHz)の間で発せられています。

よって、構音指導において、マイクで拾える音、そしてスピーカーで出せる音は、250Hzから8,000Hz(=8kHz)より広い周波数帯域をカヴァーしている必要があります。各機器のスペックとして、これを「周波数特性」と称して表示しています。語音で用いられる周波数帯域のぎりぎりいっぱいではなく、いくらか余裕を持った周波数特性を備えた機器の方がより良い条件となります。発している音に共鳴する「倍音」と言われる音の成分が8,000Hzより上の周波数でもごく小さい音で鳴っているもので、それがスピーカーから発せられる語音にリアルな臨場感をもたらすものだからです。

もしも、USBマイクを選択をする場合であれば、さらに気にかけて欲しいのは「サンプリングレート」と言われるものが44.1kHz以上、「ビット深度」と言われるものが16bit以上であることです。ちなみに、各機器のスペック表示では「サンプリングレート」「ビット深度」と言わず、ちょっと違う言い方で表記されていることも多いので、ご留意ください。これは音の情報をデジタル化する際の細やかさのようなもので、44.1kHz/16bitという数字は音楽CDと同じ音質であることを意味します。


3.お薦めに際しまして

私が実際に使ってみたわけではなく、スペックから判断した上でお薦めできるものを挙げます。まれにお手持ちのPCやタブレットとの相性で、音が出ない!ということも有り得るので、お買い求めの際にはご自身でも自前の機器と組んで使うことができるのか調べてみるようにして下さい。

尚、価格は基本的にAmazonのものを参考として挙げましたが、価格.comなどでもっと安い値段のものを探してみるとよいかもしれません。

PCとオーディオ機器を接続するのなら、「オーディオインターフェイス」なるものを購入し、利用する本格的なやり方も思いつくのですが、ここでは、よりコストを下げるためにその手段は採らず、USBポートにそのまま接続するタイプのスピーカーやマイクをお薦めすることにしました。高級感あふれる重厚さという面においては欠けるのですが、手軽さに加えて、アナログの線をできるだけ通さずにUSB接続でデジタルな情報をやりとりした方が音はクリアなはずだというメリットも考えられます。よって、ここではオーディオインターフェイスを購入しなくても良い方法をご紹介しますが、より本格的な音楽や映像の制作も手掛けようというのなら、この際、オーディオインターフェイスにチャレンジしてみても良いかもしれませんね。

コストが1万円前後で、できるだけ良いスペックのものを選んでみました。

ここのところのテレワークやリモートワークの普及で、同じようなことを考える人は世の中にたくさんいるようで、Amazonをはじめ、特にマイクに関してはここ数日間でどんどん在庫切れになっているようです。私がお薦めしても、しばらくは入手できそうにない製品もありますが、どうぞご参考になさってください。

また、何者かが、この手のテレワーク関連の製品を買い占めて、高額で転売しているような気配もありますので、どうぞお気を付けください。

MacやiPadへの接続のために、USBをつなぐアダプターやハブのようなものがいくつかのメーカーから製造販売されています。マイクに付属品として同梱されていることもあるので、使用可能なのだと思われます。しかし、これらと機器との相性が合わずに音が出ないということもあるようで、さらに、果たしてこのアダプターはマイクやスピーカーに対応しているのか?ということが明記されていない製品も多く、いくらか賭けの要素が入ってきてしまいます。奧山も、追々、実際に確かめてみたいと思っておりますが、現在のところはまだ未実施です。

以上を踏まえまして、以下、お薦めの製品をご紹介していきます。


4.スピーカー

(1)「JBL Pebbles」



周波数特性 70Hz – 20kHz

スピーカーで私がお薦めできるのは、ほぼこれ一択です。これしかないと思います。この価格帯では、ずば抜けて良いと思います。

JBLの通販サイトでも、売っています。
https://jp.jbl.com/JBL+PEBBLES.html

ヨドバシ.comでも、売っています。
https://www.yodobashi.com/product/100000001001844871/

ちなみに、もっと本格的なスピーカーになると、オーディオインターフェイスも必要な3万円以上のランクのものになってしまいます。


5.マイク

(1)Blue Microphones Snowball iCE BM200BK(またはBM200W)



周波数特性 40Hz-18kHz
サンプルレート 44.1kHz
ビットレート 16-bit

USBで接続できるコンデンサーマイクです。スタンド付きです。
値段とスペックからすると、これが一番お薦めです。

別売りで、ポップガードを購入する方が良いです。(ポップガードについては後に触れます。)
ポップガードではなく、本品には専用のスポンジの防風カバーが別売りであります。スポンジ製は一般に高周波数をカットして少しモコモコした音になりがちですが、純正のものなので、まあこれで大丈夫かもしれません。(2022年10月1日時点で在庫切れです。)




(2)【Amazon限定ブランド】888M マランツプロ MPM1000U



周波数特性(指向性) 20Hz〜17kHz(単一指向性)
ADコンバーター:48kHz/16bit サンプリングレート

これも、USBで接続できるコンデンサーマイクです。

値段が安そうに見えますが、別売りでスタンドを購入しなくてはなりません。また、ショックマウントとポップガードも購入した方が良いです。ご自身でそのあたりの手筈を整えるのは面倒かもしれません。

スタンドを机上に置くと、マイクが倒れやすいかもしれませんので(コンデンサーマイクは衝撃、湿度、ホコリ等々においてそれなりにデリケートなので、扱いに用心です)、机の縁に固定するタイプのスタンドが良いかもしれません。お子さんの背の高さにも合わせやすいと思います。下記にご紹介するスタンドにはショックマウントもついているので、これはなかなかお薦めです。

Neolightマイクスタンド



やはり机上に置くスタンドが良ければ、例えば下記のようなものはいかかでしょう。他にも、いろいろご自身で探してみて、あまり弱そうなものでなければ、何でもよいと思います。

キクタニ マイクスタンド 卓上タイプ セット時高さ103mm DS-101



机上に置く場合、ショックマウントは下記あたりのものでいかがでしょう。ちゃんとしたものはもっと高価です。絶対ないと困るものでもありませんが、足音など振動で伝わってくる音をマイクが拾ってしまい、構音の練習に支障があるようでしたら、購入をお願いすることになるでしょう。

KOZEEYショックマウント



(3)【Amazon限定ブランド】888M マランツプロ MPM2000U



周波数特性(指向性) 20Hz〜18kHz(単一指向性)
A/Dコンバーター  16bit/48kHz

(2)の上位機種のUSBコンデンサーマイクです。

(2)よりちょっと高いですが、純正のショックマウントとケース付で、性能も良くなっています(ノイズがこちらの方が少ないです。でもこちらの方がちょっと音が小さいようではあります)。これは、お買い得かもしれません。

ショックマウントを買う必要がないので、スタンドだけ買えばよいことになります。ポップガードもできれば購入すると良いです。


(4)RODE NT-USB Mini NTUSBMINI



周波数特性:20Hz-20kHz
Sample Rates 48 kHz
Bit Depth 24-bit

コンデンサーマイクで有名なオーストラリアのメーカーの製品です。

値段がひとランク上ですが、性能も明らかにひとランク上です。なんと本品にはポップガードもスタンドも装着済みです。USBでWindowsだけでなくMacにも対応しています。面倒な別売り品の購入がほぼなくて済みそうです。(iPadの場合、Lightningに変換するアダプターを別に買う必要があるくらいかと。)

なんと2020年の4/17に新発売となったそうですが、Amazonでは4/27に在庫切れになりました。さらにその夜、Amazonで5万円台の値をつけて転売する業者が現れました。お気を付けください。


(5)マランツプロ Umpire



周波数特性:80 Hz 〜 15 kHz
16ビット解像度
サンプルレートは32 kHz、44.1 kHz、48 kHzから選択可能

コンデンサーマイクでUSB接続、スタンドもショックマウントもポップガードも装着済みです。
周波数特性が少し落ちますが、ポップガードをつけると音が少し悪くなるものなので、そのせいかもしれません。価格からすると、申し分ないと思います。


(6)SHURE MV5A-G-LTG-A



Frequency Response 20 Hz to 20,000 Hz
A/D Converter Up to 24-bit/48 kHz

コンデンサーマイクでUSBだけでなくLightningにも接続できます。
「Mac、PC、iPhone、iPod、iPad、Android端末対応 ※全てのアンドロイドデバイスに互換性があるわけではありません。仕様についてはメーカーの各製品詳細をご覧ください。」…だそうです。
音に関しては、やはり値段に見合って、ひとランク上ですね。スタンド付きです。

できることなら、ポップガードの別途購入が必要だと思われます。


6.ポップガードについて

マイクに「ふーっ」と息を吹きかけると、低い「ぶおっ」とひどい風の音が出てしまいます。これを「ポップノイズ」と言います。例えば「はひふへほ」や「さしすせそ」等を構音した際に、このポップノイズがマイクで生じてしまうと、どんな構音をしているのか聴き取れなくなってしまうのです。

これを防ぐ「ポップガード」というものがあります。歌手の人がレコーディングをしている写真で、マイクの前を丸くて黒い金魚すくいの網のようなもので遮っているのを見たことはありませんか?あれがポップガードです。

ポップガードには布製のものと金属製のものがありますが、布製のものだと息だけでなく音も若干遮ってしまい、少しモコモコとした音になりがちなようです。例えば、サ行やタ行のような高い周波数成分を含む構音練習に影響を及ばす可能性があります。金属製のものは少し値段は高いですが、こうした音質の劣化が起きにくいです。よって、金属製のものをお薦めいたします。

安値の金属製で、それなりに機能するものとして、これがお薦めです。

Dicon Audio ポップガード DCP-2



ただし、これは安い分、網のまわりのギザギザをむき出しのままにしている作りなので、これが皮膚に擦れると痛くて、ちょっと危ないです。お子さんがケガをしないように、網のギザギザにぐるっとビニールテープなどを貼っておくのが良いように思います。


以上、長々と書き連ねてみましたが、不明な点などございましたら、お尋ねください。

尚、製品や値段や在庫等については、どんどん変更になっていくものでしょうし(特に値段は毎日のように変動しているようです)、製品の仕様も変わる可能性がありますので、各々、ご自身でもよくお確かめの上、ご購入下さい。くれぐれも自前の機器で使えるものか、良く確かめてからご購入下さい。

わかばルーム 奧山信爾 (2022/10/1現在)

ことばと子育ての相談室「わかばルーム」 ホームへ

Mail