近年の療育をめぐる状況の変化について

2023.7.23up

わかばルームは、児童発達支援事業でも放課後等デイサービスでもありません。臨床に「発達障害」の概念も用いません。わかばルームがそれをする必然を感じないからです。知的な発達やこころやことばの問題に関して、たとえどんなお子さんであろうとも、より先に進むための働きかけを諦めることなくアプローチでき、優しさの中で本当に子どもが変わっていくセラピーの存在とその伝統を知り、学び、自らが行えるようになり、長年にわたり実践し、それらが本物である成果を確かめてきたからです。

療育や子育て法には流行があります。しかし、かつての私が見てきたものは、真摯に私設相談室を運営しておられた先輩先生方の、流行に惑わされず、良い世の中になることを願いながら、ご自身のその高度な実践や方法論にどこまでも磨きをかけていく姿でありました。そんな「職人意識」とも言うべき、本物の流儀を守り続ける必要を今こそ感じます。そしてその良さを実践的に多くの方に実感していただける私設の療育や子育て相談の様式を後世に残していきたいです。それ故に、敢えて、公金による事業ではなく、利用者の方の自由な必要に応じて、私塾やお稽古事と同等の相談料で運営する古典的な民間の相談室のスタイルを今日でも維持し続けています。

療育にまつわる国の制度が改訂されて以来、ほんの数年で事業所が爆発的に増えました。この分野が公金ビジネスとして注目されている側面がありますが、もちろん、良心的な志ある方もこの制度の中でお仕事なさっていることをお察ししますし、敬意を感じます。しかし、それでも施設が足りないという話を聞きますが、これはなにか奇妙です。一時期、拙相談室のはす向かいのビルに資本の大きい同業者2軒が入ったことがあり、福祉の分野では未曽有のマーケティングの流儀が横行する時代となったことを痛感しました。そんな中、自分の立ち位置を見直し、本質的な問題として、どうすれば子どもは自分自身をポジティブに見出し、前向きに変わっていくのか?…について、これまで培ってきた考え方の基本をブレさせることなく、よりレベルの高い難易度の主訴解決も果たせる技術を磨き続けることで、拙相談室の存在理由を維持して参りました。